特区から全国展開へ(規制緩和の道のり第16話)

2017年07月11日

 前回、「身体の拡張」という分かりづらいことについて書きました。

 乗り物を自分の身体の一部のように感じ、さらに周囲の人や街までも自分の身体の延長であるかように感じられるというセグウェイでの移動は、自動車ができる前の時代に人類が馬で移動していたときに味わっていた感覚に近いのだろうと思います。

 

 私も馬で移動するというのがどういうものなのかを自ら体感するためにホーストレッキングや乗馬を経験しています。

 

 数年馬に乗ることを初めて経験したとき、たしかに人馬一体の身体感覚がもたらされ周囲にも身体性を感じながらの移動はセグウェイでのそれはとても近いものがあるなと実感しました。

 

 人が馬で移動していた頃は、今のような車道と歩道が分離されているような道路構造と違い、馬車の道と人が歩く道が分離されてもいなかったでしょうから、馬で移動する人たちは周囲に気を払いながら、周知の人とコミュケーションをとりながら移動をしていたのだと思います。

 

 セグウェイはそういう馬での移動の感覚に近いものをもたらす乗り物の構造をしています。歩行者と分離された専用のレーンを高速で効率よく走る自動車やバイクと根本的に設計思想が違います。

 

 なので、そのような自動車やバイクを念頭に作られた道路交通法や道路運送車両法にそのまま適合することが難しいのです。無理にそれに適合させようとすると、セグウェイのその特徴が台無しになってしまいます。

 アメリカやヨーロッパでは、セグウェイはこれまでの自動車やバイクとは違うものだという認識のもと法律を改正し新たなカテゴリーを作っております。日本でもセグウェイが普通に公道を走れるようになるには、法改正を行い新カテゴリーを作ってもらう必要があります。

 

 しかし、我が国でいきなり法律を変えることは難しい。なら、まずはエリア限定で実験を行い、安全性やベネフィットを検証しようという。ということで始めたのが「つくばモビリティロボット実験特区」です。

 2011年に始まり、毎年数千キロの実験を行い、事故や特段の問題もなく実験は進みました。様々な関係者に協力していただいたり、参加していただいたり、はじめは警戒していた茨城県警の方々にも段々に理解をいただけるようにもなりました。

 そして、2015年になり、つくばロボット特区は、政府にもその成果が認められて、つくば以外でもセグウェイの公道実験をしてもよいという特区の「全国展開」という運びになったのでした。

 「全国展開」といっても、つくば以外で自由にセグウェイが乗れるようになったわけではなく、実験を行うことはできるもののまだまだ色々な規制は残っていますが、我が国におけるセグウェイ公道解禁に向けての大きな前進です。日本の法律のもとでは絶対むつかしいと言われながらも、少しずつですが、扉は開きつつあります。

 

 新しいテクノロジーが広がり、社会に浸透し、何かが変わっていくためには、10年、20年、30年とかかると言われています。今では誰もがスマホでSNSなどを行うようになり、インターネットはもはや生活に欠かせないインフラとしてとても身近なものになっていますが、これもインターネットができて情報革命と叫ばれてからここまでくるのにやはり30年くらいかかっています。30年前に社会が今このようになるなんて予想できた人は、スティーブジョブスや一部の天才以外にはいないと思います。

 

 セグウェイが世界で発表されてからおおよそ15年です。パーソナルモビリティが社会の新しいインフラの一部になれるかどうか、これからの5年、10年が勝負です。

 

(つづく)