経産省への出向(規制緩和への道のり➄)

2017年05月25日


今話題の経産省に僕も10年前に出向してました。その時の話です。

少し話を遡ります。
 
セグウェイの規制緩和(道路交通法)を仕掛ける前、2007年頃だったでしょうか。
僕は経済産業省に出向してました。
 
経産省での僕のミッションのひとつは、農地法の規制緩和に関することでした。
 
リーマンショック前でしたので、企業の国内投資が盛んな頃でした。
経産省は、さらに国内への企業立地を進めるため、当時の経産相である甘利明大臣肝いりの企業立地促進法という法律を作りました。
 
当時、国内への投資を伸ばすための大きな課題の一つが、我が国の厳しい規制でした。
もう一つは、煩雑な許認可の手続きでした。
 
そこで経産省は、そうした規制を緩めて、手続きも簡略化できるように、法律を作ったのでした。
 
その中での、僕の担当のメインは、農地法の規制緩和に関することだったのです。
 
企業誘致を頑張っていた自治体は、さらに企業を呼び込もうと新たな誘致用地を作ろうとしてました。しかし、そこが農地法の指定を受けている地域だと、たとえそこが現状が農地として使われていなくても、誘致用地に用途変更することが困難だったのです。
 
結構な数の自治体から何とかしてほしいという声が経産省に来ておりました。
 
何十年も前に、とりあえず農地用地として計画しておけば補助金とかがきっともらえたのでしょう。その農地計画が仇となって、現在は未利用の農地であっても転用できずに現状のまちづくりにあった土地利用ができないということなのです。
 
しかるべき手続きを踏んで何年もかけて農政局と交渉すれば、農地転用ができないわけではありません。 
 
しかし、何年もかけて転用するから待っててね、と言って待っててくれるのんびりした企業なんていません。
 
なので、やるとしたら数年前から先行投資的に自治体はやるしかないのですが、数年後にニーズがあるか分からないのに土地利用を変更するのは合理的ではないですし、そもそも明確な目的があって、そこでなくてはダメな理由があって初めて農地転用は許可されるのです。
 
そこで経産省が農水省にものを申して、これこれこういうことで国内への企業立地の阻害要因となっているから、農地法の規制緩和(企業立地のための特例措置)を何とかしてもらおうと交渉することになったのです。
 
農水省のもっとも大切な法律、農地法に物申すなんて、なんて大胆な省庁でしょう。
 
と、第三者から見れば、経産省さすがと、称賛ものですが。。。
 
ということで、
農水省の本丸に攻めこめ、という大変重い課題が、弱小自治体からの出向1年目の若造(たしか当時27歳とか)に課せられたのでした。
 
 
農地法を色々と調べてみると、農地法よりも厄介な法律がもう一つありました。農振法です。これの指定を受けていると、これを外すのがとてもとても大変なのです。いわゆる農振除外というやつです。
 
農地の規模が大きい場合、市町村の協議相手は、都道府県を超えて地方農政局になります。
 
正式な申請の前に事前協議というのがあります。これがとてもハードルが高く時間がかかります。正式な申請ではないので、ログが残りません。基準も曖昧なためその都度ケースバイケースでの交渉となり時間がかかります。担当者が変わればまた一からやりなおしです。
 
お、どこかでも何か聞いたことあるような話。
 
この事前協議を明確化するための基準を作る、その時間に期限を設ける。それだけでも大分ちがうのではないか。
 
そのようなことを可能にしてもらったり、5年に一度の農振計画の見直しにとらわれずに、現状耕作放棄地になっていれば比較的容易に転用可能にしてもらったり、そのようなことを目指して、農水省と交渉することにしたのです。
 
農水省へは、ぼくの上司の課長補佐と数回に渡り交渉に行きました。
 
すぐ隣のオフィスなのに、そこには大きな隔たりがありました。
省庁間の壁の高さを身を以て実感しました。
 
経産省よ、うちの法律に文句を言うなんて、いい度胸しているな、お前らの工場立地法こそ時代遅れなんじゃないか。
 
省庁間で、他の省庁の法律に物申すのは、そうなんです、実はご法度なのんです。自分の首を絞めることになるこら。
 
けれども、経産省は日本の経済を再生させるためには他の省庁の法律に物申さないと、もはやダメなことが分かっているのです。
他人のふんどしで相撲取らないとだめなのです。
 
経済の再生に必要な産業政策は、土地利用であり、交通であり、外交であり、教育であり、子育てなんです。
そしてそれらはすべて他の省庁が担っているのです。
 
なので、経産省はこの企業立地促進法しかり、のちの産業競争力強化法(これが二子玉川でのセグウェイ規制緩和につながる。若干警察庁に骨抜きにされたが。)しかり、そのような法律を作り、他の省庁に物申そうとするのです。
 
これは大変立派なことだと思います。
 
が、問題が一つありまして、法律を作っただけでは他省庁は動きません。
 
そのあとの交渉ごとが大切です。
そこがきちんとしないと、いわゆる骨抜きになるのです。
 
法律を作る。これは役人からすれば勲章ものなのですが、キャリア官僚は2年くらいで異動するので、法律ができてもその後はすぐに異動します。後任の人は、大抵他の人が作った法律の運用にはあまり興味ありません。それはあまり評価の対象にはならないのでしょう。
 
なのでその後の法を運用するのはノンキャリか自治体からの出向者になるのです。
 
しかし、それでは相手省庁のキャリアはなかなか動かせません。
 
ということで、僕も、経産省の立場で農水省お役人との交渉を頑張ってはみましたが、実質1年未満の時間では、本丸の農地法や農振法自体の緩和(特例措置)にはとても至りませんでした。
 
なんとか農水省が地方農政局に対して事前協議の短縮化を指示する通達を一枚出すというところまではこぎつけましたが、これだけではどれほどの実効性があったか分かりません。
 
農水省は一応通達を出すという仕事をした。経産省も一応農水省に通達を出させるという仕事をした。
 
が、残念ながら、実質的にはこれは敗北でした。
 
というようなことを書いていたら、構造改革特区で味わった骨抜きをすでにこの時経験していたことを思い出しました。
 
今思うと、これがぼくの規制緩和に関するエピソードゼロでした。
 
(続く)